Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「先生を、誰にも取られたくなかったから……。」


 それは、冗談などではなく、遼太郎の心からの素直な気持ち。それを表すように真面目な顔をして、遼太郎はみのりを見つめ返した。

 自分の苦し紛れの言葉が、そこまで遼太郎を駆り立てていたなんて……。遼太郎の純粋さと想いの深さに触れて、またみのりは泣いてしまいそうになった。

 でも、ここで涙を見せると、また遼太郎は慰めなければならなくなる。
 そう思ったみのりは、グッと涙を我慢して、遼太郎の空いている手を取った。


「どこかこの辺に、落ち着いてご飯食べれるところないの?運動したからかな?お腹すいちゃった。」


「……〝運動〟……って、先生。」


 みのりのあっけらかんとした言い方に、遼太郎はたじろぎながら赤面してしまう。けれども、その手を振りほどくことなく、再び並んで歩き始めた。


 みのりを導くように行く遼太郎には、目的の場所があった。たまに自転車で通りかかるときに、目に留まっていた店。男が一人で入るのには勇気のいるような店だったが、もしみのりが一緒にいたならば、〝行ってみたい〟と儚く虚しい妄想を巡らせていた場所だった。


 でも今、その妄想が虚しくならずに済んだ。遼太郎が思い描いていたように、みのりはオープンテラスの一席に座り、微笑みかけてくれている。


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