Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「これは……、切れなかったの。遼ちゃんが触れてくれた部分を、切り落としてしまいたくなくて。」


 遼太郎はまた、自分の胸が甘くキュンと痛むのを感じた。この髪が伸びる時間ずっと、みのりは想い続けてくれていたということだ。


「遼ちゃんに返しそびれてた日本史の課題プリントも、処分できずに、そのまま取ってあるの。自分から遼ちゃんに会わないって言って別れたのに、矛盾してるでしょ?」


 恥ずかしそうに肩をすくめるみのりを見て、遼太郎は緩く首を横に振った。


「先生が俺のためを思って、あの選択をしたんだってことは分かってます。そりゃ俺だって、東京に来た頃は立ち直れないくらい落ち込んでたけど、実際先生と離れていたからこそ、経験できたことや、自分で考えて理解できたこともたくさんあります。」


 遼太郎があの春の別れを、そんなふうに理解してくれていることが、みのりにとって何よりもありがたいことだった。目の前にいる遼太郎は、みのりが願っていた以上に、立派に成長してくれていた。


「それじゃ、我慢できなかったのは、私の方ね。遼ちゃんが卒業するまで待てずに、会いに来ちゃったから。」


 そう言いながらはにかむ笑顔が、なんとも言えず可愛らしい。数年ぶりの心地よい刺激に、遼太郎の胸の甘い疼きは止まりそうになかった。


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