Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 白いワンピースを着て赤いカーディガンを肩に羽織っているみのりは、奇抜な格好をしているわけではないのに、店内にいる誰もが無意識に振り向いてしまうくらい特別な存在だった。なかでも、レジの近くにいた男は、彼女連れにも関わらず、遼太郎と同じようにみのりに見入ってしまっている。

 だけど遼太郎は、もうこんな些細なことでヤキモチを焼かなかった。


――……あの髪に触れただけじゃない。先生の全部にキスをした……。


 男が視線を動かせないみのりの手元や胸のあたりだけでなく、うなじや背中や足首にも全部。目で見るだけでは分からないその滑らかさや柔らかさが、遼太郎の手のひらに唇に残っている。


「あっ…!!」


 その時、みのりの声とともに、小銭が散らばるけたたましい音が鳴り響いた。音の正体は、みのりが手のひらに受け取りそこねて、床にぶちまけてしまったおつりだった。



 遼太郎は我に返ってみのりに駆け寄り、一緒になって小銭を拾い始める。その遼太郎に気づいて、みのりがきまり悪そうにつぶやいた。


「私。また、やっちゃった。」


 それを聞いて、遼太郎は優しく微笑む。これは、昔から変わらないみのりの一面。こんなみのりがとても愛しくて、遼太郎は小銭を拾いながら、込み上げてくる想いを噛みしめた。


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