Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「駅は、こっち?」


 重くなった空気を払うように、みのりが明るい声で遼太郎に尋ねる。遼太郎も気を取り直すように、みのりの手を取った。


「駅は……こっちです。」


遼太郎が敢えて導いたのは、駅へと向かう回り道。駅に着くと、みのりは電車に乗ってしまう。今は少しでも長く、みのりと一緒にいたかった。

 一緒にいられるあとわずかな時間、できるだけ穏やかな気持ちで、そして別れを告げるときには次に会えることを楽しみにして、お互いに笑顔を交わしたいと思った。
 だけど、会えない時間の切なさは、なによりも身に染みている。その切なさに突き上げられて、みのりの手を握る遼太郎の手には、知らず知らずのうちに力がこもる。

 みのりも握られている手をギュッと握り返して、遼太郎の気持ちに応えてくれた。たったそれだけのことで、胸がきしんで痛くなる。


「さっきのお店、素敵なところだったね。」
「もう九月も終わるのに、まだ暑いね。」

 みのりが気を紛らわせようと、そんな当たり障りのない話題を幾度となく持ち出すけれども、切なさに覆いかぶされて会話は少しも弾むことはない。


 流れていく時間を惜しむように、ゆっくりゆっくり歩いても、そうしているうちにとうとう駅に到着してしまった。改札口から少し離れた所に立ちすくんで、二人はどちらからもそのつないだ手を離せないでいた。


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