Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜


 電話口で、自分の気持ちを素直に表現してしまうと、自分をコントロールできなくなる。だから敢えて、陽菜のことだけを話題にして、甘い言葉を封印した。

 帰って来たばかりなのに、もう遼太郎に会いたくてたまらない。遼太郎の声が、いつまでも耳の奥でこだまして、みのりはアパートの部屋の中で一人、切ない涙をこぼした。




 大学の後期の講義は、それから数日後の週明けから始まった。また、いつもと変わらない日常が戻ってくる。
 遼太郎は機会があれば話をしようと、陽菜の姿を探した。けれども、探すときには見つけられないものだ。普段の陽菜が、うっとうしいくらい姿を現していたのも偶然などではなく、陽菜自身が意識的にそうしていたのだと、遼太郎は改めて覚る。

 講義の空き時間に、佐山や樫原とともにゼミ室に来てみたけれど、そこは無人で、やはり陽菜はいなかった。

 佐山は、真ん中の大きなテーブルに付けてある椅子に座り、イヤホンで音楽を聞きながらスマホをつつき始めた。
 遼太郎も佐山に向かい合うように座ると、先ほど大学内のコンビニで買ってきたコーヒーの紙コップをテーブルの上に置いた。すると、樫原はすかさず遼太郎の隣に座り、同じようにコーヒーのカップを置いた。


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