Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
樫原は遼太郎にフラれてからも、相変わらず遼太郎の後を付いて歩く子犬のようだった。それは、それまでと同じように、友人としての立場を保とうとする樫原の努力の証。それはもう、健気なほどだった。
遼太郎も、そんな樫原の心を汲み取って、普通でいることを心がけた。佐山も遼太郎と樫原とのことを蒸し返すことなく、三人の仲は以前と変わらず良好だった。むしろ以前よりも、お互いの心を知ることができて、深い部分で信頼関係を結べたように遼太郎は感じていた。
「あ、狩野くん。さっきの講義のノート取ってた?僕、途中でちょっと寝ちゃってて、見せてくれる?」
「ああ、うん。いいよ。」
遼太郎はバッグの中からルーズリーフのファイルを取り出し、そこから先ほどの講義のノートを取り出した。
「ありがと。」
差し出された二枚ほどのノートを受け取ろうとして、樫原が手を伸ばした拍子に、コーヒーのカップに触れてしまう。
「あっ……!!」
勢いよく倒れた拍子にフタが外れ、中のコーヒーが一気に遼太郎の方へ押し寄せた。
「あーあ……。」
見事に茶色に染め替えられた遼太郎の白いシャツを見て、佐山がため息をついた。
「ごっ、ゴメン!!狩野くん!」
「いや、大丈夫だよ。」
焦って謝る樫原に、遼太郎はとりあえずそう言って返してあげる。