Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「いやいや、それは大丈夫じゃないだろ。」
横から佐山が口を挟むと、樫原はますます顔を青ざめさせる。
「狩野くん、ちょっと待ってて……!」
そして、そう言うや否や、ゼミ室を飛び出していき、佐山は呆気にとられるようにそれを見送ってから、口を開く。
「それじゃ、ちょっと外歩けないだろ?猛雄のヤツ、何か当てがあるのかな?」
遼太郎もため息をついて自分のシャツを見下ろすと、コーヒーが流れた茶色の模様。ふいに遼太郎の中に、つい数日前の出来事が思い出される。
みのりはあんな時でさえも相変わらずドンくさくて、遼太郎の部屋のラグをコーヒーで汚した……。
茶色いシミを眺める遼太郎の表情が、かすかに柔らかく緩むのを、イヤホンを着けなおす佐山が目にとめた。
「これ、バスケ部の友達から、部活用の着替え借りてきた!」
附属から上がってきている樫原は、やっぱり顔が広いらしい。
「ありがとう。」
せっかくの樫原の心遣いを無駄にしてはいけないので、遼太郎はTシャツを受け取って、その場で着替え始めた。
その時、チラリと視界に入ってきた遼太郎の背中を見て、佐山の視線が動かなくなる。おもむろに耳にはめていたイヤホンを外すと、驚いたような顔になって口から言葉がこぼれ出た。