Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……遼太郎、お前。この秋休みにいろいろあったみたいだな。」
Tシャツから顔を出した遼太郎が、その言葉を聞き直すように佐山に視線を合わせた。
「その背中の引っかき傷……。ネコはそんなふうに左右対称に引っかいたりしないだろ?」
佐山のその指摘を受けて、その意味を理解した途端、遼太郎の顔は火がついたみたいに真っ赤になった。なんと言って、言い繕えばいいのか分からず、固まってしまう。
「陽菜ちゃんと〝デート〟みたいなことしてることはうすうす知ってたけど、もうそんな関係になってたとは、……知らなかったぜ。」
〝陽菜〟という名前を聞いて、表情が険しくなった樫原も、問い質すように遼太郎を見つめる。
同時に遼太郎も、その〝陽菜〟という名前に敏感に反応して、硬直を解いた。
「……違う!これは、長谷川じゃない。」
赤面したまま激しく首を左右に振って、佐山の変な勘繰りを即座に否定した。
「……じゃ、相手は誰なの?」
樫原の口を衝いて、その質問が飛び出してくる。普段、女の子と関わりを持とうとしない遼太郎だったから、まるで見当がつかず、その疑問は当然のものだった。
「高校の時に付き合ってた人が、会いに来てくれたんだ。」
そのことを告白する遼太郎の表情は、佐山も樫原も初めて見るものだった。思いつめたような切ない顔。それは、遼太郎がみのりを恋しく想う心を、そのまま投影していた。