Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「それは……、前に言ってた、『ずっと好きだった人』か……?」
「……うん。」
神妙になった佐山の問いに、遼太郎も素直にうなずいた。
「そっか。想いが叶って、よかったな……。」
佐山は、遼太郎の胸に秘められたその想いの深さを知っている。メガネの奥の、佐山の目が優しく微笑んだ。
「『ずっと好きだった人』って……?」
その時、虚をつかれたような面持ちで、樫原が遼太郎に尋ねた。
何も知らなかった樫原に、遼太郎は向き直って改めて説明する。
「高三の時にずっと好きだった人で、卒業式の時に告白して、少しだけ付き合ったんだけど、俺がこっちに来る時に別れることになって……。でも、俺はその人のことしか考えられなくて、ずっと想い続けてて……。」
樫原はそれでようやく、本当の遼太郎のことを知った気がした。時折、遼太郎から感じ取っていた、言いようがなく物悲しい〝陰〟のようなもの。そんなふうに引きずるほど、〝その人〟は遼太郎にとって、大事な人だったということだ。
陽菜のことを牽制などするまでもなく、樫原が遼太郎を好きになる前から、遼太郎の心の中にはそんな人がすでに存在していたということだ。
樫原は、胸の奥がキュッと切なく痺れる感覚を伴いながら、その問いを発した。
「……どうして、そんなに好きだったその人と、別れたりしたの?」