Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎は、その時のことを思い出しながら大きく息を吸い込むと、もう一度樫原の目を見つめ返した。


「その人は、俺を〝自由〟にするためだって言ってた。俺が大学っていう新しい世界で、何にも捉われずに成長できるように、〝別れ〟が必要なんだって。」


 それを聞いて、樫原も佐山も言葉を逸した。
 単に嫌いになったり、気持ちが薄れたから別れたわけではない。遼太郎のためにその〝別れ〟を決断するとき、その人はどれほど遼太郎を想っていたのだろう。そして、そんな〝別れ〟を突きつけられた遼太郎は、どれほど辛かっただろう。

 遼太郎の切なすぎる想いを共有して、友人二人はそれぞれにその想いを胸の中にしまい込んだ。


「相手の人も会いに来てくれたんだから、遼太郎と同じ気持ちだったんだろうな。」


 佐山は切なさを噛みしめながら、また微笑んで遼太郎へと言葉をかけた。
 そう言ってもらえた遼太郎も、幸せそうに微笑みながら言葉を返す。


「……『私の方が我慢ができなくなった』って、言ってたよ。」


 〝我慢ができなくなった〟その人は、遼太郎のもとへやって来て、彼に抱かれて想いを遂げたのだ。その想いの強さが、遼太郎の背中の傷にも表れている。そんなことを想像して、佐山の顔がほのかに赤くなった。


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