Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「長谷川!」


 遼太郎はゼミ室を出ると、すぐに陽菜の背中に向かってその名を呼んだ。陽菜はチラリと振り向いて、遼太郎が追いかけてきていることを確かめた途端に走り出した。


「……!?」


 遼太郎は反射的に陽菜を追いかけた。ここで見失ってしまうと、次はいつ出会えるか分からない。

 足の速い遼太郎はすぐに陽菜に追いついて、階段の踊り場のところでその腕を捕まえた。今まで手さえも繋いでくれなかったのに、いきなり遼太郎にそんなことをされて、陽菜はビクッと反応してしまう。
 遼太郎はそのまま陽菜を踊り場の壁際に追い詰めてからその手を離し、向かい合った。


「……どうして、逃げるんだ?」


 遼太郎から問われて、陽菜はその目も合わせずに答える。


「狩野さんとは、何も話すことなんてないから。」


と言いながら、その場を立ち去ろうとする陽菜の行く手を、遼太郎はすかさず壁に手をついて妨げた。けれども、努めて冷静に陽菜とは話をするつもりだった。


「俺は、話したいことがあるんだけど。」


「……この前、一緒にご飯を食べたとき、先生と二人でしらじらしい嘘をついてたことの、言い訳でもするつもりですか。」


 しかし、陽菜のこの言い草を聞いて、遼太郎もカチンときてしまう。


「言い訳じゃない。説明だ。」

「言い訳されても、説明されても、私には関係ないことですから。」


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