Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……じゃ、勝手にしろ。」
低い声で短くそう言うと、壁についていた手を引っ込めて、背中を向けた。階段を上っていく遼太郎の足音からも怒りがにじみ出ているようで、陽菜にとっても、そんな態度の遼太郎は初めてだった。
でも、陽菜は唇を噛みしめても、決して泣かなかった。
「絶対に、諦めない。最後は絶対に、狩野さんは私のものになるんだから。」
遼太郎のいなくなった宙を見つめながら、呪いのような誓いを立てた。
陽菜のことは、遼太郎の心に少し引っかかるものではあったが、そう大して気にすることでもなかった。陽菜の方もやはり故意に遼太郎を避けているのか、それからというもの、その姿を目にすることはなかった。
遼太郎にとって陽菜は、所詮ただの後輩。会わなくなれば、自然とその意識の中から消えてなくなる。
陽菜のことはおろか他のことは何も考えられなくなるくらい、遼太郎の頭の中を占拠していたのはみのりの存在。よほど神経を集中してない限り、みのりのことが浮かんできて遼太郎のすべてを甘く満たしていく。
こんなふうに恋愛に冒されているような状態は、遼太郎自身も自分らしくないとは思う。けれども、みのりがもたらしてくれた圧倒的な感覚は、時を問わず遼太郎の中に押し寄せてきた。