Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎がみのりのもとに飛んできて抱きかかえると、みのりはとうとう意識をなくして遼太郎へと体を預けた。
 青白く冷たい肌、白っぽく血の気のない唇。傷口を押さえていたタオルからは、もう血液が滴り落ちている。


「――先生……っ!!」


 遼太郎は叫びながら、みのりを抱きしめた。
血が止まってくれることを祈りながら、強く傷口を押さえて、命よりも大事な人を抱きしめ続けた。
 それから、救急車が来るまでの数分間は、遼太郎にとってまるで永遠のようだった。



 病院に到着してからも、みのりが処置を受けている間、遼太郎はひたすら待ち続けた。陽菜も、遼太郎から少し離れた場所に、黙って座ってうつむいている。

 先ほど、遼太郎がみのりに付き添って救急車に乗り込もうとしたとき、陽菜はそこを立ち去ろうとした。


「どこ行くんだよ?」


 遼太郎は陽菜の腕を掴んで引き戻し、半ば無理やりに救急車へと乗せた。
 遼太郎が救急隊員に、みのりの思いついた〝嘘〟の経緯を説明する間も、陽菜は何も言い出さなかった。

 こんなことをしでかしてしまった陽菜を問い質したいのはやまやまだったが、今はまだ思考がそこまで回らず、何も言葉にならなかった。


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