Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「どんな理由があっても、人を『殺す』なんて言っちゃいけないわ……。」


 少しかすれた声でのみのりの諌めを聞いて、遼太郎もその通りだと思う。だけど、何よりも大事なみのりに危害を加えられて、陽菜を殺したいほど憎いことは否定できなかった。


 遼太郎は何もみのりに言葉を返せず、悲痛でやるせない表情で唇を噛んだ。その表情を見て、遼太郎がどれだけ心配して、どれだけ気を病ませたのか、みのりにも痛いほど伝わってくる。
 今は、この愛しい遼太郎の心を軽くして、怒りで消えてしまった本来の優しさを取り戻してあげたかった。


「もう大丈夫みたい。どこも痛くないから。」


 あれだけの怪我を負っていて、痛くないはずがない。それでも笑ってみせるみのりの顔を見て、遼太郎の胸の方が痛くなる。


「でも、一時は死ぬとこだったんです。」

「でも、私は死んでないし。遼ちゃんに介抱してもらって、こんなふうに見つめてもらえて、とってもラッキーだし。」


「……なに、言ってんですか……。」


 遼太郎は、みのりの物言いに半ば呆れたが、そのみのりの心を読み取っていっそう胸が苦しくなった。
 遼太郎の目が少し潤んだのを見上げながら、みのりはいっそう優しげな笑みを浮かべた。


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