Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……こっちに来て。変な真似したら、すぐに警察に通報するからな。」
遼太郎は振り向いて、陽菜へ目配せした。遼太郎の冷たい目に見据えられて、陽菜はビクッと体をすくませたが、もう逆らうことはできなかった。
陽菜がみのりの枕元まで歩いてくると、遼太郎はその場を入れ替わるように部屋の隅に行き、陽菜の様子に目を光らせた。
「一緒にご飯を食べたとき、嘘をついててごめんなさい。あのときは、陽菜ちゃんが遼ちゃんの彼女だと思い込んでて、本当のことが言えなくて。」
みのりは開口一番、遼太郎が言えなかった謝罪の言葉を口にした。
けれども、陽菜は死んでしまったような目をして、みのりとは目も合わさず、なんの反応も示さなかった。起き上がることのできないみのりは、そんな陽菜を見上げるかたちで言葉を続けた。
「遼ちゃんに彼女がいたって知ってるから、きっと陽菜ちゃんもそうなれるって思ってたのよね?……でも、遼ちゃんが彼女を作ったのは、私が〝宿題〟を出してたからなの。大学では、いろんな経験をたくさんして、女の人ともきちんと付き合うように……って。」
自分の思惑をみのりに見透かされて、陽菜の目が戸惑いを宿した。遼太郎の口から語られるのことのなかった事情を知って、凍りついていた陽菜の感情がざわめき始める。