Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「もちろん、そのときはちゃんと私とは別れたし、新しく別の人を好きになって〝付き合う〟っていう意味だったんだけど。遼ちゃんは宿題をするために割り切って、偽りの恋人同士になった。私の言ってしまったことで、遼ちゃんと相手の女の子と陽菜ちゃんの心を弄んで、罪なことをしたと心から悔やんでるし反省してる。……だから、ごめんなさい。」
みのりが心から詫びていることは、陽菜にも分かっていた。
だけど、陽菜の歪んだ心には、みのりの唇からこぼれ出る言葉が、ただの綺麗事ばかりを並べて自己弁護しているだけのように思われた。
その言葉の響きは、遼太郎からただ一人想われている人間の余裕のように聞こえた。こんなにも遼太郎を恋い慕っているのに報われない。そんな陽菜の想いに、哀れみをかけられているようにしか感じられなかった。
陽菜の心はますます病んで、みのりの不幸を願わずにはいられなくなる。その心を映して、陽菜の表情は不穏な暗さを漂わせた。
「遼ちゃんと一緒に、自分も死のうと思ってたの?」
その時、みのりが核心を突くような問いを発した。
陽菜は遼太郎を狙っていた。それはドアを開けた瞬間に刺されたときから、みのりには分かっていたことだった。