Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 陽菜は思わず、逸らしていた目をみのりに合わせて、そこから視線を動かせなくなる。
 みのりも、戸惑いを宿す陽菜の目を、ジッと見つめ返した。まっすぐなみのりの目で見つめられると、陽菜も自分の心を偽れなくなる。


「……私だって、先生みたいに……、狩野さんに抱きしめてもらいたかったのに……!」


 唇を震わせながらその思いを吐露した時、陽菜の目に涙が浮かんだ。でも、これまでも陽菜は、どんなことがあっても泣かなかった。このときも必死で涙を飲み込んで、潤んだその目でみのりを睨むように見つめ返した。


「それは、遼ちゃんの意思だから……。私も遼ちゃんのことが好きだけど、たまたま遼ちゃんも好きでいてくれるから、抱きしめてもらえるの。私は遼ちゃんの気持ちを縛ったりしていないし、抱きしめてもらいたいのなら、遼ちゃんの心を動かして好きになってもらうしかない。」


 みのりは努めて冷静に、普段生徒に接するように陽菜に語りかける。


「それができたら、こんなに苦しんだりしない。どんなに私が頑張っても、そうなるように仕向けても、狩野さんは全然見向きもしてくれなくて。女の人に興味がないのなら納得できたけど、あんなふうに私以外の人を抱きしめるなんて許せない……!」


 その陽菜の言葉を聞いて、初めてみのりは陽菜の本来の性質に気がついた。まじまじと陽菜の顔を見つめるみのりの表情が曇り始める。


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