Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「……もう分かっただろう?俺にとって、先生以上の人はいないんだ。俺に想いをかけてくれて、いろいろ尽くしてくれたことはありがたいと思ってるよ。だけど、もう終わりにしてくれないかな?君のしたことも、警察には言わないでおくから。」


 陽菜のしたことは、どんなふうに解釈しても、絶対に許せない。本来ならばきちんと警察に届けて、罪を償わさなければならないことだ。

 けれども、遼太郎がこのまま終わらせようとしたのは、みのりの意思を尊重したというよりも、みのりを守るためだった。
 〝事件〟として警察に届けて調べを受けると、みのりは勤める芳野高校の校長へ報告しなければならなくなるだろう。元生徒のところで、恋愛関係がもつれて刃傷沙汰の原因を作った…。その事実は、教師であるみのりの立場にも支障をきたし、被害者なのに責められることもあるかもしれない。

 それに、遼太郎の中ではなによりも、陽菜とのことはここで一切終わりにさせて、金輪際関わりを持ちたくなかった。


 『分かっただろう?』と言われても、陽菜はまだ分かりたくなかった。自分の中にこんなにも完璧に作り上げた遼太郎への〝恋〟が、目的をなくして消えていってしまうなんて……。


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