Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎は、口に含んでいたコーヒーを飲み込んで、隣にいる佐山に視線を合わせた。


「……どんな人って一言では言えないし、俺が何を言っても惚気てるって思われるだろうけど。彼女は……、俺にとって本当に遠いところにいた人で……、ずっとずっと想い続けて、やっと振り向いてくれたんだ。やっとこの手が届いた人なんだ。」


 みのりを語る遼太郎の想いに、佐山の胸がキュンと切なくなった。

 〝彼女〟に近づくため、自分を高めるために、遼太郎が不断の努力を続けていたことは、側にいた佐山が誰よりもよく知っている。
 〝彼女〟はいつも、そんな遼太郎の心の中にいて、すでに今の遼太郎を形作る一部になっているんだろうと、佐山は思った。ゼミの皆から慕われる遼太郎も、陽菜が狂気を帯びるほどに恋い焦がれた遼太郎も、〝彼女〟がいなければ存在し得なかった。


 その何よりも大切な〝彼女〟が生死をさまようような傷を負った……。

 今の遼太郎がどれほど心を痛めているか。きっと傷を負った彼女よりも苦しんでいることは、佐山にも容易に想像できた。


「……くれぐれも言っておくけど、今回のことは、お前のせいじゃないからな。悪いのは、一人で勝手に暴走した長谷川陽菜だ。あんな女だったなんて、お前じゃなくても誰も想像もしてなかったんだから。」


< 700 / 775 >

この作品をシェア

pagetop