Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜




「それじゃ、みのりちゃん。これ、サンキューな!」


 二俣は重たい紙袋を軽々と掲げ、グラウンド脇で雑用をするマネージャーのところへ走って行った。

 二俣の「みのりちゃん」という声を聞いて、遼太郎がみのりの姿を見つけて、指をテーピングした右手を上げた。
 肩にプロテクターを着け、腕にもサポーターを着けていて、まさに戦闘準備の様相だ。そんな遼太郎に胸をドキドキさせながら、みのりも右手を振って遼太郎に応えた。


 しばらくみのりが選手たちの練習風景を眺めていると、早くもヒバリの鳴き声を聞いた。空を仰いで声の主を探すが、姿は見えず、春の長閑な青空が広がるばかりだ。

 春の色が濃くなりその陽光が強くなればなるほど、対照的にみのりの中の影も濃くなっていく……。

 チクン…と胸の痛みを感じながら、再び練習する遼太郎を探し出して、唇を噛んだ。



 公式戦ではなく練習試合なので、さすがに応援の数は少ないが、ちらほらと保護者やOBなどの姿が見える。

 みのりが試合のよく見える場所を探していると、ラグビー部顧問の江口が手招きした。


「仲松さん、こっちにおいで。」


 座るように促されたのは、タープの下の江口やその他のコーチたちが座るパイプ椅子の一つ。試合がバッチリ見える場所には違いないが、部外者のみのりにとってこの場所はかなり気が引けた。


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