Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
12番の背中がボールを持ち、相手ディフェンスを引き付けておいて、走り込んできたフルバックにパスを出すのが見えた。
フルバックがタックルに倒されると、いち早く4番の二俣が駆けてきて、壁のように密集の上へ覆いかぶさった。足で掻き出されたボールを9番が拾い上げ、再び10番の宇津木へとパスされる。
「宇津木!左!」
遼太郎が宇津木を鼓舞し、手を上げてパスを促した。
相手のディフェンスラインが乱れているのを見て取った遼太郎が、隙をついてゲインラインを突破する。
必死で追いかけてきた相手フルバックがタックルを仕掛けてくる直前に、遼太郎をフォローしていたウィングにパスして、そのウィングがトライを決めた。
「よし!」
江口が膝を叩く。しかし、すぐさま隣にいるコーチたちと、たった今のプレーについて冷静に分析を始めた。
そんな江口たちの隣でみのりは、遼太郎のあまりに華麗なプレーに目を奪われて、ボーっとしてしまっていた。
胸がドキドキと激しく脈打ち、顔がほてってくる。
これではまるで、憧れの先輩を胸をときめかせて見つめる女子中学生みたいだった。
花園予選のように、負けたら終わりというような切迫感もなく、すでに引退した身というのが心に余裕を持たせているのか、遼太郎はいきいきとグラウンドを駆け回り、楽しんでプレーしているようだった。
その姿は、深くみのりの心に刻み込まれていく。