Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「よっしゃ!みのりちゃんのおにぎり!いっただきま~す!!」
二俣がおどけるように両手を翼のように広げて、着替えに走る。徳井も遅れてなるものかと、それに続いた。
そこに残されたみのりと遼太郎は、少しぎこちなく向き直った。
以前のような教師と生徒の関係でもなく、それでいて二人きりでもないこんな場合、どんなふうに相手に接すればいいのか、お互いが模索している状態だ。
「あの…、差し入れ。ありがとうございました。」
遼太郎が改まった感じで、ぺこりと頭を下げた。みのりも少し肩に力を入れて、それをすくめた。
「そう言えば今まで、差し入れしたことなかったな…って。」
「あんなにたくさん。一人で作るのって、大変だったんじゃないですか?」
「うーん…。うちの炊飯器って、5合炊きなのよ。だから、3回に分けてお米を炊いたわけ。時間はかかったけど、そんなに大変じゃなかったかな。」
「ということは、1升5合炊いたんですか?いや、一人でそれは大変だったと思います。」
遼太郎はそう言ってくれたが、それでみのりは「大変だったのよ」と言って恩を売るような人間ではない。ただ嬉しそうにニッコリ笑って、遼太郎へと返した。