Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「ま、遼ちゃんに馬車馬のようにこき使われて、練習前にかなり疲れたけど、みのりちゃんにそう言ってもらえれば、頑張った甲斐があったよ。」
と、二俣は相変わらず馴れ馴れしく、みのりと肩を組んだ。みのりも拒むに拒めず、二俣の腕の下で小さくなって笑っている。
それを見た途端に、遼太郎の表情が険しくなる。その視線を気取った二俣は、クワバラとばかりに両手を上げた。
「邪魔者は消えま~す。」
ニヤニヤとしながら遼太郎に向かって眉を動かし、一瞥すると、二俣はするりと戸口から出て行った。
二俣がいなくなってしまった瞬間、二人の間にはぎこちない空気が漂い始める。完全な二人きりだったら、もう少し打ち解けられるのかもしれないけれど、部室の外からは部員たちの楽しげな声が響いて来ていた。
みのりが話題を探していると、遼太郎の方が先に口を開いた。
「…先生の作ったおにぎり、食べたかったです。」
口を尖らせて、いかにも残念そうな遼太郎に、みのりの方も笑いをもらす。
「今日のおにぎりは疲労回復のために、梅干しだけなのよ。この前城跡に行った時みたいに、ツナマヨや鮭のはないの。」
そう言えば、自分はすでにみのりのおにぎりを食べたことがあることを思い出して、遼太郎は自分自身をなだめて、息を吐いた。