Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
そしてまた、二人の間に浅い沈黙がよぎると、遼太郎は無意識に焦り始めた。
黙っていると、自分の中に充満している〝抱きたい〟という欲求が、体の中から滲み出てきて、みのりに覚られるのではないかと、気が気ではなかった。
「この写真は、卒業アルバムの分?」
部室の一番奥に並べて掛けられている、歴代の部員の集合写真の方へと、みのりが歩み寄る。
「遼ちゃんが写ってるのは、どれ…?」
と、20枚ほどある写真に、みのりが目を走らせていると、遼太郎が側に来て指を差した。
「あっ!これ。1年生の遼ちゃん?!」
嬉しそうに、目を輝かせて振り向いたみのりの表情に、遼太郎の心臓がドキッと跳ね上がった。
そんな顔をされると愛しさが募って、抱きしめたくてたまらなくなる。
「1年生の時はまだ、遼ちゃんは細くて小さかったのね。今みたいになるために、ずいぶん食べてすごく鍛えたんだね。」
みのりは一番後ろの列の端に立つ遼太郎の姿を見て、微笑んだ。
…そして、堂々たる3年生の横で座っている口髭の男、顧問だった石原を見つけて、ズキンと胸に痛みが走る。かつて遼太郎に打ち明けた不倫相手が、実は石原だったと知ったならば、遼太郎はどんな反応を示すだろう…。