ぼくのことだけ見てなよ
でも、なにかしてほしいなんて言えるわけもなく。〝大丈夫〟なんてウソをついた。実際傷つけるようなことはしてほしくないし…。

それに頷いた美島は、わたしの前から消え、彼女たちのところへと行ってしまった。

「2人とも、耳塞いでたほうがいいかも」
「え…?」

美島がアチラに行ってすぐ、コッチに来たのは松井で。よくわからないことを言ってきた。

耳を塞ぐって、どういうこと…?那津と顔を見合わせ、首を傾げた。でも、そのイミがすぐにわかった。

「ねぇ。キミたちは、なにが望みなの」
「……あ、の…」
「ん?なに。言いたいことあるなら、いいなよホラ」

女子たちに詰め寄る美島の声は、とてもじゃないけど今までの声とは比べものにならないくらい冷たい声で、言われていないコッチが息をのむくらい怖かった。

「か、楓くんが……」
「ぼくがなに」
「か、変わったって……」
「ふぅん。ぼくが変わったら、いけないの」
「………」
「あー、そういうこと」

クスッと美島が笑ったのが、うしろから見ていてもわかった。楽しそうな笑い方じゃなくて、失笑っていうのかな…。呆れた笑い方、みたいな。

「ぼくが変わっちゃったら、キスもそれ以上のことも、できなくなっちゃうもんねぇ?」
「……あ、」
「ねぇ、そういうことでしょ?なに、キミたちはぼくとそういうことをするのが、お望みだったわけ?」
「……あ、の」
「なら、椿姫に危害与えなくても、いくらでもしてあげたのに。そこに気持ちなんかないけど」

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