溺愛ドクターは恋情を止められない
それじゃあ、『彼女とは別れてきた』という彼の発言は嘘ではないんだ。
「まさか、都?」
「ううん。でも……」
「あっ、いけない。時間が」
壁にかかる大きな時計が、始業時間を指そうとしている。
「帰り、ご飯行こうよ」
「わかった」
那美は心なしかうれしそうな顔をして去って行った。
その日の救急担当は、酒井先生だった。
相変わらず美しく、立ち居振る舞いも上品だ。
“女性らしい”酒井先生は、高原先生とのツーショットを想像しやすい。
やっぱりふたりはお似合いの組み合わせ。
小谷先生にあんな話を聞いたからか、ネガティブな思考が私を支配した。
「松浦さん、IDありがとう」
「いえ。お疲れ様でした」
酒井先生には、非の打ちどころがない。
普段は物腰柔らかなのに、診察中はキリリと鋭い目をしていて……治療が終わった瞬間、優しい笑顔が戻る。