溺愛ドクターは恋情を止められない
血が怖いなんて言っていられない。
失われる命より怖いものなんてない。
たったあれだけのことで、手伝いなんて言えないのかもしれない。
それでも、実際に治療に立ち会い、高原先生が心臓マッサージを止めない理由がわかった気がした。
「松浦……」
高原先生は、私を真っ直ぐ見つめて視線をそらさない。
「ありがとう。やっぱり松浦はこの仕事に向いている。俺も負けないように頑張るよ」
未だ血が克服できていないのに、向いているのかどうかわからない。
でも、私もここにいたい。
「それじゃ、お疲れ」
「お疲れ様でした」
彼はまだ帰れないのだろう。
病棟の方へ向かう後姿をしばらく眺めていた。
手の届かない人の、後姿を。