溺愛ドクターは恋情を止められない
「裏のドアから、あの子を連れ出すから、しばらく処置室はこのままで。連れ出したことを気づかれないようにしてくれる?」
「はい」
緊張感がピンと張りつめる。
それからすぐに、酒井先生が対応するはずの救急車が滑り込んできた。
一気に騒がしくなって、あの母親もようやくスマホから目を離した。
「申し訳ありませんが、スマホのご使用はここではご遠慮ください」
私が注意すると、ギロッと鋭い目でにらまれる。
「医療機器に影響を与えます。救急ではご遠慮いただいています」
それでも、ひるむことはできない。
命に係わることもあるのだから。
「まだなの?」
渋々スマホをバッグにしまった母親は、気だるい声をあげる。
少しも心配している様子はない。