溺愛ドクターは恋情を止められない

高原先生の切れ長の目が、悲しい色に変化した。
その瞬間、母親が脱力して、目を泳がせる。


「先生、あとは私達が」

「お願いします」


児相の職員にバトンタッチした先生は、深く頭を下げスタッフルームに戻って来た。


「先生……お疲れ様でした」


そんな風にしか、感謝の気持ちを述べられない。

全く関係のない私が、先生に「ありがとう」と言いたいのはおかしいのかもしれない。
だけど、あの子を救ってくれた彼に、そういう気持ちを抱いた。


「色々、サンキュ」

「いえ、私は……。あのっ、あの子は……」

「大丈夫だよ。骨折が何か所もあったけど、命にかかわるような状態ではない。緊張しただろ」


微笑んだ先生の前で「はーっ」と溜息をつくと、瞳が潤んできてしまう。
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