溺愛ドクターは恋情を止められない
「あの、先生。ありがとうございました。とても楽しかったです」
今日は、高原先生に救われてばかりだ。
先生は返事の代わりに、私の頭をポンポンと叩く。
大きくて男らしい彼の手は、もう震えてはいなかった。
「松浦って、門限あるの?」
再び車に乗り込むと、先生はエンジンをかけた。
「いえ、ひとりなので……」
「ひとり暮らしなのか。実家はどこ?」
『実家』と聞かれて少し困る。だって……。
「実家は、ないんです」
「ない?」
ギアに手をかけた先生は、ハッと私を見つめる。
「はい。両親は離婚していて、父はすでに別の家庭があります。母がひとりで私を育ててくれたんですけど、四年前にがんで……」
先生は黙り込んで、しばらくなにかを考えている。