溺愛ドクターは恋情を止められない

「あの、先生。ありがとうございました。とても楽しかったです」


今日は、高原先生に救われてばかりだ。

先生は返事の代わりに、私の頭をポンポンと叩く。
大きくて男らしい彼の手は、もう震えてはいなかった。


「松浦って、門限あるの?」


再び車に乗り込むと、先生はエンジンをかけた。


「いえ、ひとりなので……」

「ひとり暮らしなのか。実家はどこ?」


『実家』と聞かれて少し困る。だって……。


「実家は、ないんです」

「ない?」


ギアに手をかけた先生は、ハッと私を見つめる。


「はい。両親は離婚していて、父はすでに別の家庭があります。母がひとりで私を育ててくれたんですけど、四年前にがんで……」


先生は黙り込んで、しばらくなにかを考えている。
< 29 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop