溺愛ドクターは恋情を止められない
茫然としたまま院長室をあとにすると、奏多さんは突然私の手を引き、医局とは反対の方に歩いていく。
そこは、あまり使われることのない階段だった。
「都」
「私……イヤです。奏多さんがここにいられなくなるなんて」
混乱のあまりに、言いたいことを口にする。
「イヤ。絶対に、イヤ!」
「都、落ち着いて」
彼は叫ぶ私を強く抱きしめる。
「イヤ……」
自分の幸せのために、愛する人の夢を奪うなんて……。
「都」
彼は泣きじゃくる私を、しばらくそのまま抱きしめてくれていた。
「覚悟の上だったんだよ」
私はなんて浅はかだったのだろう。
小柴部長の怒りは覚悟していたのに、まさか、奏多さんが外科から外されるなんて、思ってもいなかった。