溺愛ドクターは恋情を止められない
「泣いてもいいんだ」
私の腰を抱きとめる彼の手に、力がこもった。
温かい。
先生の腕の中は、まるで母親のお腹の中のように、私を丸ごと包み込んでくれる。
彼のシャツをギュッと握り、声を殺して涙を流す。
その間、彼は一言も発することはなく、ただただ、私を抱きしめ続けた。
「すみません」
当直室の時よりずっと長く泣いていたと思う。
やっと気持ちが落ちつき、そっと彼から離れる。
それでも、顔を上げることができないでいると先生の大きな手が、私の頬を包みこみ、優しく涙の跡を拭いてくれた。
「今日は、よく頑張ったな」
「お手洗い、お借りします」
おそらく、グチャグチャになっているだろう顔が恥ずかしくて、トイレに駆け込むと、鏡を覗き込んだ。
腫れた目に、化粧のとれた頬……。
本当にひどい顔をしている。
だけど、思いきり泣けたことで、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。