桜の下で、君を想う。
君がいなくなってもう8年も経つよ。
この公園の桜は8年前のあの日と変わらないよ。
とても綺麗だ。
俺は、またこの公園に立っていた。
あと、あと何年ここにくれば君のことを諦められるんだろう。
何年経っても君のことが好きで。
でも年月というのは怖いもので、君の顔が記憶の中でだんだん朧げになっていく。
君のことを思い出せなくなるのは怖い。
君の温かい瞳、白い肌、桜色の唇、綺麗な髪、全てが愛しくて。
寂しいよ。
なんで俺のことを置いて行ったんだ、絵美。
「今日も、絵美の日記を持ってきた。ほら、この桜の木が俺が見事に玉砕した木だぜ。昨日のことのように思えるな。」
人混みが俺のことをジロジロと見ながら避けるように動いていく。
「懐かしいな。絵美のことを忘れた日なんて一度もないよ。」
桜は、そこに変わらず立っていた。
凛として、僕を見つめていた。
「綺麗な色だな。」
その時、風が強く吹いた。
俺の手の中から日記が飛ばされ、空を舞うように地面に落ちた。
「あーもう、古い日記なんだがら大事にしないと・・・。」
そう言いながらかがんでひろうと、最後のページに何かが書いてあった。
「嘘だろ、前は何も書いてなかったのに。」