こんな私、私じゃない。でも私・・・
初めて食事に行った日から、新城さんはわざわざ私を家まで送ってくれる。

私の家は会社から電車でふた駅、そこから徒歩で10分の距離。

新城さんの家を尋ねたら、『人事なのに知らないんだ』と、言われた。なるほど、人事だから知っていてもおかしくない。でも新城さんは私より先に入社してるから個人ファイルもデータも見てない。『例え知っていても知っているより、教えてもらう方がいいじゃないですか』と、私は言っていた。

新城さんのことなら本人から教えて欲しい。私はそんなふうに思っている。

『最寄り駅ってなるなら同じかな、でも駅から20分くらい歩く』そう教えてくれたのは何回目かの食事の帰り道。

どっちかが金曜日の夜に都合が悪ければ、水曜日か木曜日に簡単な食事をしに行っていた。

私たちって付き合ってるの?

聞くことが出来ない私。

聞いてこの関係が崩れるのが怖い。

新城さんは聞き上手で私が一緒にいて嫌だと思うことはなかった。仕事のことで少し愚痴ると聞いた後で、『こういう考え方もある』と私のことを否定することなく違う考え方を教えてくれた。私は単純なのだろう、気持ちがラクになるような気がして新城さんとの時間は楽しかった。

気になる男から尊敬できる人とかまた違った気持ちに変わりつつある自分に気づかないわけではないけれど、今はこれでいいのかと思っていた。

”気持ち”に気づくとその気持ちを大切にしたくなる。

次を求めてしまいたくなる。

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