こんな私、私じゃない。でも私・・・
女の気持ち
「でも元人事から言わせてもらうと完全引っ越しは無理だよね」

このままこの余韻に浸りたい気分だけど、さすがに元人事として現実的にそこは避けられない。

「わかってる。ちゃんと考えてるから・・・」

そう言ってキスが深みを増そうとし始める。

「考えてるって?」

私はまた後で話すって目で訴えてるすぐるにさらに聞き返す。

「向かいのマンションに美沙が引っ越しする。二人のすぐに使わない荷物をそこに置いて、こっちで暮らす」

向かいのマンション?今、建築中のマンションのこと?

すぐるはそう言いながらキャミの中に手を忍ばせようとしていた。

「俺は美沙に断られると思ってたんだ。だから・・・」

キャミの中の手がスーッと上がってきた。

「説明してくれないとヤダ」

私はすぐるの手を服の上から動きを止めた。

嫌なわけじゃないけど、きちんと説明してほしい。

フッと諦めたように笑って服の中から手を出し起き上がって座った。

「わかった。説明する。その代わり、朝までな」

少し拗ねているすぐるを可愛いと思ってしまった。

朝まで?

聞かなかったことにしよう。

「拗ねてるの可愛い」

私がそう言って起き上がるとすぐるは私を背中から抱きしめた。

「可愛いってなんだよ。話している間、こうさせて」

背中から耳元で囁かれた言葉にきゅんとして抱きしめてくれた手をぎゅっと抱きしめた。
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