こんな私、私じゃない。でも私・・・
「その弟」

―――弘樹?

少し驚いている感じ。

「そう、弘樹」

―――なんだ弘樹か。

安心した声になった。

「すぐるが言ったんでしょう?一緒に住むって」

―――ああ言った。それの確認電話?

「そんな感じ」

―――そうか・・・引越し手伝うって言ってくれてた。

「私にも言ってくれたよ。すぐるをまた飲みに誘いたいけどいい?ってわざわざ私に聞いてた」

―――楽しかったからまた行きたいと思ってたとこ。

「そう、良かった」

―――美沙・・・明日はここに帰って来いよ。

なんか切実な声に聞こえた。

「すぐる?」

―――最近ずっと一緒だったから無性にこの家が広く感じる。

「そっか、わかった。明日はそっちに行くね」

―――ああそうして。じゃ、おやすみ。

「うん。おやすみなさい」

通話を終了させてテーブルの上にスマホを置いた。

すぐるに大切にされていると思う。

私もすぐるが大切。

弘樹の言った「結婚」とかは考えない。

うーん、すぐるとずっと一緒にいられたら楽しいだろうな・・・

でもすぐるは結婚とか考えない人だと思う。

元カノの別れた理由が『結婚したい』って言われたからって言ってた。

私が「結婚したい」って言ったら、どうするんだろう?



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