こんな私、私じゃない。でも私・・・
私は少し肩を引き寄せられて、その後すぐるは軽く腰に手を添えた。

はっきりと「俺のですから」なんて言われたら恥ずかしい・・・でも嬉しい。

「・・・『俺のですから』ね。随分はっきり言うんだな・・・」

少し沈黙した後に木田主任はため息混じりの言葉だった。

「はっきり言わないと失礼かと思って・・・」

「何となく気づいてたけど、やっぱりそうか・・・そうか・・・」

木田主任はすぐると私から目線を外して高い天井を見上げた。

暫く沈黙した後に続けた。

「でもさ、そう簡単に諦めきれないな」

木田主任は顔をすぐるに向けた。

「さっきも言いましたけど、譲れないです。それに1年以上あったのにアクションを起こさなかったのは何故ですか?」

すぐるはそう言うと私の腰に軽く添えた手をぐっと引き寄せた。

私は思わずすぐるを見たけど、手に力が入っているのでそのまま何も言わなかった。

「何故か・・・」

木田主任はすぐるの動きを見ながらフッと笑って、私に顔を向けた。

「考えすぎて誘うことが出来なかった・・・今なら思うよ、さっきみたいに軽く誘えば良かったって」

もしかして、すぐるより先に木田主任に誘われていたら・・・

考えられないな。

上司と部下としてご飯には行ったかもしれないけど、それ以上は考えられない。
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