こんな私、私じゃない。でも私・・・
「二人のきっかけは新城からの誘い?」

その時、今まで静かだったエレベーターが動き始め、このまま帰る訳にはいかない3人は階段の方へと移動した。

「そうです」

すぐるは聞かれたら応える感じなのだろう、濁すこともなかった。

「神村さんが入社して半年くらい経った頃かな、誘おうって思い立ったことがあったんだ。でもね、その時に気づいたんだよね」

何を気づいたのだろう?

木田主任は私を真っ直ぐに見た。

私は首を傾げてしまった。

「神村さんが新城を見てることに」

私は目を見開いてしまった。

私がすぐるを見てることに・・・

入社して半年だったらそれは私自身も気づいていないかもしれない。

木田主任は気づいていた・・・

同時にすぐるの私の腰に添えていた手がより力が入り、私を驚いた顔で見下ろした。

私はそれに気づき俯いてしまった。

何も言えなかった。

「その顔はわかってなかった?」

木田主任はすぐるの驚きように問いかけた。

「まさかって感じです。自分から誘う時も断られるの覚悟してましたから・・・」

木田主任はすぐるの言葉にフッと笑った。

「覚悟ね・・・それでも誘えるのが羨ましいよ。そうか・・・」


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