こんな私、私じゃない。でも私・・・
何度目かのため息混じりだった。

「神村さんが俯いたままなのが、きっと言った通りだよね。恥ずかしそうにしている神村さんもまた可愛いね。ってことで、俺は諦めないから・・・よろしくね」

そう言って「神村さん」と呼ばれて、私が顔を上げるまで黙ったまま。

私は自分が気づいてなかったとはいえ、木田主任に言われたことはやっぱり恥ずかしい。

そう思ったものの顔を上げた。

「新城は優しい?」

今日、二度目の質問。

なんで同じ質問なんだろう?

「優しいです」

今度は躊躇わず同じ言葉で返した。

そしてまた俯いてしまった。

「そう、それなら良かった。二人はお似合いだよね」

近藤主任と似たようなことを言った後、「お疲れ」と言うと出口に向かっていった。

すぐるは木田主任が出口を出てから私の名前を呼んだ。

「美沙」

ここは会社の階段フロア。

誰かが通るかもしれない・・・

でもすぐるは私の頬に手を触れた。

私はびっくりして顔を上げた。

「美沙、このまま家に帰りたいけど、姉貴との約束があるから行こうか?」

私はいつからすぐるを見ていたんだろう。

『気になる男』と意識していた時には既に見ていて・・・きっと無意識に見ていたのだろう。

それを木田主任が気づいていたなんて・・・
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