こんな私、私じゃない。でも私・・・
「離さなくてもいいのに・・・」

手を離すと瞬時にすぐるに言われた。

「そういう訳にいかないよね」

すぐると一緒に乗り込んでつり革を持つと私はすぐるに呆れた声を出した。

「そう?まっそうだけど・・・」

すぐるが冗談で言っているのは分かっている。

「で、どこに行くの?」

家の方向ではない電車に乗っていた。

「南町」

ここから30分くらいのところ。

「南町?お姉さんの職場の近く?」

南町だと家からだって充分に通える距離。

「実家と姉貴の職場の最寄駅」

えっ!?

実家?

すぐるの実家、南町なの?

「実家近くなんだね」

「確かに近いね」

「実家に帰るって話し聞かないけど、帰ってる?」

通勤時間帯の電車はわりと静かだけど、今日は学生が乗っていて賑やかだったので話しを続けることにした。

「帰ってもこき使われるから帰らない」

「そうなの?あっお姉さんは実家に住まわれてるの?」

てっきり一人暮らしだと思ってた。

「ああ、実家の居心地が良すぎて出られないんだよ」

ええっー!?

「そうなんだ。居心地がいいっていいね」

私は居心地が悪いわけではないけど実家にいるって選択肢はあまりなかった。

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