こんな私、私じゃない。でも私・・・
「私の家で一緒にご飯食べない?孝徳も帰り遅いし二人で飲みましょう。明日は祝日で休みだし」

暫くの沈黙の後、緒方さんがいいことを思いついたって感じでやけに明るい声で言った。

「えっでも・・・」

私は躊躇った。

お酒なんか飲んだら緒方さんに話しをしてしまいそうな自分がいる。

「いいじゃない。どうせなかなか帰ってこないから。ワインは飲めるわよね?」

「ワインは好きですが、あまり得意ではなく・・・」

「そうなの?大丈夫よ。いただき物だけど、色々あるからおつまみ作って女二人で楽しみましょう。神村さんの話しも聞きたいしね 」

と、私を見て、とても意味ありげに微笑んだ。

緒方さんはいつも穏やかで落ち着いていて私より年下なのにしっかりしてる。

どうやったらこんなふうになれるんだろう?

「緒方さんってなんでいつも穏やかなんですか?」

「えっ!?私?」

私の質問に驚いたのかやけにびっくりしている。

「穏やかに見える?」

「はい」

「そう、穏やかに見えるなら嬉しい」

「嬉しい?」

「うん。私は孝徳といると穏やかでいられるの。彼は私の穏やかと癒やしだから・・・」

まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかった。でも旦那さんのことをそんなふうに言えるなんてステキ。

「ステキですね。羨ましい」

「そう?ありがとう」

なるほど。早川さんに同じこと聞いたら同じ答えが返ってきそうだなっと思っていた。
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