こんな私、私じゃない。でも私・・・
「聞いたって言わないで下さいね。『最近仕事が忙しくて私のことを見てくれないの』って言われてました」

「そっか、ホントに仕事が忙しくて・・・それは新城さんも一緒だよね」

と、私の顔を見た。

「ちゃんと話した方がいいよ。新城さんが機嫌悪いままだから仲直りしてね。今日はここで待ち合わせ?」 

「いえ・・・鍵を預かったのですが・・・」

「もうすぐ帰って来ると思うよ。サーバー落ち着いたみたいだし・・・」

「ありがとうございます」

私はテーブルの上に置いていたスマホを手に取った。

「あっ・・・」

着信もメールもあったらしい。気づかなかった。話に夢中だったからかな?

「新城さんから?」

「はい。着信あったみたいで・・・」

「かけた方がいいよ。俺は咲希を連れていくから、ここでかけて」

と、言うとソファーで眠っている緒方さんを抱きかかえた。

軽々と持ち上げてホントに大切なものを抱えてる感じでリビングのドアを開けると廊下へと消えていった。

私はそれを見送って、新城さんに電話を掛ける。

―――はい。今、どこ?

新城さんはすぐに電話に出た。

「すみません。緒方さんの家にいます」

―――緒方さん?早川はいるの?

「はい。先程帰って来られて、今は緒方さんを寝かせに・・・」

―――もうすぐマンションの前だから、降りて来れる?

「はいすぐに降ります」

―――じゃ下で。

そう言うと新城さんは通話を終了させた。

私も終了させて、テーブルにスマホを置くとテーブルの上を片づけ始める。

このままで帰るわけにいかない。

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