こんな私、私じゃない。でも私・・・
「お疲れ。新城さん」

私は靴を履いていた。

「美沙は?」

新城さんが私の名前を問いかけた。

「今・・・・・・大丈夫?疲れてない?」

早川さんが玄関先の私に意味ありげなことを言った。私は玄関から顔を出そうとする前に早川さんの手が腰に掛かる。明らかに早川さんは楽しんでる。新城さんがガッと玄関を開けた。

「何やってんだよ。早く来い」

新城さんは私の手首を持ちぐいっと引っ張った。

「冗談だよ」

早川さんは思いっきり楽しんだように両手を上げた。

「世話になった」

と、私の為に新城さんはそう言うと、乗ってきたエレベーターが止まっていたので手首を離し、腰を引き寄せエレベーターに乗せた。

「おっ邪魔しました。緒方さんによろしくお伝えください」

私は最後に挨拶をした。

「二人ともおやすみ~」

と、早川さんは楽しそうにひらひらと手を振り、エレベーターが上がるのも見送ってくれた。

「何やってんだよ」

新城さんはなんか怖い顔をしている。

エレベーターが8階に到着し、私はバッグから新城さんのキーケースを取り出すと渡した。

新城さんが鍵を開ける。玄関を開けて入ると私を引き寄せたまま、そこでキスをした。後ろで玄関ドアが閉まる音がした。

「・・・んっ・・・あっん・・・」

久しぶりのキスに私は吐息がもれる。

唇を離した新城さん。

「何してんだよ。許さないから・・・」

< 66 / 214 >

この作品をシェア

pagetop