愛して。Ⅲ

シゲさんのお店は路地裏に面していて、倉庫の方へ帰るには一度大通りに出なくてはならない。

そして大通りに出ようと歩いていた時、“それ”を見つけた。



街灯に照らされた白。

光が乱反射して、キラキラ輝いて見える。

吸い寄せられるように近づくと、それが人で子どもだと気づく。



お正月に路地裏で雪を被って蹲っている子ども。

どう考えても、普通の家庭環境にいる子どもだとは思えない。

昔の自分を思い出して、思わず蓮の手を離してその子に駆け寄って声をかけた。



「ねぇ、大丈夫?」



手を差し伸べる。

その子が少し顔を上げると、雪に隠れていた漆黒の髪が現れた。

綺麗な漆黒……蓮みたい、と思った次の瞬間、息をのむ。
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