愛して。Ⅲ
あたしは両手で男の子の小さな顔を包み込み、上を向かせた。
「そんなこと言ったらダメ。もう絶対言わないで」
「う、うるせぇよ!関係ないだろ!」
「関係ある!助けたんだから、関係あるわよ!」
男の子は暴れるけど、非力だ。
小さな男の子の力なら、あたしだって抑えられる。
まるで子どもの喧嘩のようになっていたあたしと男の子は、蓮によって引き剥がされた。
「お前、帰るとこあんのか」
「…………」
「おい、あんのかって聞いてんだ」
「……帰りたくない」
小さな声だった。
「なんで帰りたくねぇんだ」
「言いたくない」
「言え」
男の子は黙る。
「なんで帰りたくねえのか言うなら、ここに置いてやっても良い」
「蓮?!」
隼が驚いた声を出す。
「まじで言ってんのか?」
大河も意外そうに言う。
「あぁ」
蓮が頷くと、あたしたち4人の視線が男の子へ向く。