愛して。Ⅲ
「別に、置いてくれなくていーよ」
「いいのか?ここ出たらお前、行き倒れて野良犬やカラスの餌になるかサツに補導されて保護者連絡だぞ。餌になるか帰りたくねーとこ帰るって選択でいいのか?」
男の子は渋々口を開いた。
「……帰るとこなんかない」
「親は?」
「死んだ」
男の子の目が真っ赤に染まる。
「蓮、もういいでしょ?」
「まだだ」
可哀想だと思って蓮に言ったが、蓮は譲らなかった。
「今はどこの世話になってる?」
「……施設」
「なんてとこだ」
「なんでそんなことまでっ」
男の子は目に涙を浮かべて反抗したが、蓮は冷静なままだった。
「言わねえなら餌になるしかねえな」
「……花野園」
「わかった」
蓮はその施設名に覚えがあるのか、そう言って部屋を出て行った。
男の子はあたしたちを拒絶するように毛布を頭から被っている。
しばらくしてから蓮は戻ってきた。