カタブツ上司に迫られまして。
好きか嫌いかの二択なら、好きだと思う。

だけど、恋人としての“好き”ではないような気がする。

確かにさ、課長は仕事は真面目で面白味もないとか言われていて。
冷たくて嫌だと言う人は多いし、そこが良いと言う人もいるけれど……。

冷たいのはともかく、考えている事がわからないくらい無表情な人は苦手。

でもきっと実際の課長は、口は悪いし、少しだらしないし、私をSだと言うけれど、まず間違いなく課長もSだし。
人の事はからかうし、順番はめちゃくちゃだし、めちゃくちゃだけど……。

「鳴海……お前は会社では無口だが、表情にはでるのか?」

「え? 表情?」

ポカンとしたら、課長が無表情で眉間を指差した。

「何を悩んでいるのか知らないが、眉間のシワがすごい」

「……それはすみません」

眉間をさすってからご飯を食べ続けた。

どっちにしろ、仕事中に考える事でもないよね。

課長にお会計を任せてお店を出ると、加代子たち経理部の人たちが見えた。

「あ。由貴!」

「お昼?」

「今、終わったところ。ここで食べていたの?」

「うん。課長におごってもらったの」

加代子の表情は見ものだった。

かくんと口を開け、目を真ん丸にして固まっている。

「あの課長が?」

いや。気持ちは解らないでもないけれど、驚きすぎじゃない?

どうしようか困っていたら、加代子の後ろから、懐かしい顔が見えた。

「あ。夏川さん」

「お久しぶりねぇ。鳴海さん」

「育児休暇終えられたんですか?」

「うん。三日前からちびたち預けて働いてるよ~」
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