カタブツ上司に迫られまして。
監査室に戻って席についたら、中村さんが近づいてくる。

「鳴海さん。課長たちとご飯してきたんてすか?」

何故かコッソリと、すでにデスクに座っていた課長を見ながら囁いた。

「え。うん……。ご飯食べてきたわ」

「経理部の夏川さんに、バッタリ会ったって聞きましたけど、どうでしたか?」

「はい……?」

どうって? 意味が解らないけど。

眉を下げて、困った顔をしたら、中村さんは嬉しそうに近づいてくる。

「夏川さんて、課長の元カノでしたよね? 課長と別れてすぐに結婚されて、すぐに妊娠したって噂があるんですよー!」

「夏川さんが……?」

「そうなんですー。実際、私が入社した当時は、もう二人は別れてましたし、夏川さんは赤ちゃん産んでましたけど……どうなのかなって思って。確か所属は違いましたけど、課長と夏川さんて、同期なんでしょう?」

同期なんでしょう? って、聞かれても解らないよ。

だって、私が入社した当時ですら夏川さんはすでに結婚されていたし。
私たちが新人研修が終わってから妊娠も解ったんだし……。
そもそも笹井課長は課長だったし。

「そうなんだ?」

呟いたら、中村さんは本当に嬉しそうにした。

「一応、課長って、怖いけどエリートコースじゃないですか。狙ってた女子も多いのに、夏川さんが何故、課長と別れたのか……気になりますよねー」

「うん。うーん? とりあえず、いいかな?」

呟くと、中村さんは少し白けたような顔になったけれど、構わずに袖机の鍵を開けて午前中に頼まれた書類を出した。

「んもう! 鳴海さんて、真面目なんだからぁ!」

真面目でいいじゃない、真面目で。

それが駄目だとは言われないのが会社員でしょ。

ぼんやりと書類を見ながら苦笑して。
中村さんはまだ何か言っていたけれど聞き流す。
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