カタブツ上司に迫られまして。
「夏川さんて、可愛いですよね?」

「……まぁ、見た目は」

「性格だって可愛いですよ。優しいし。私は一年近く指導してもらったんですから」

「それ言ったら、俺は入社当時から知ってる」

それはそうだけど。

「課長は夏川さんと付き合っていたんでしょう?」

聞いたら、課長の首が微かに動いた。

「半年くらいな。だが、昔の話だ」

「人の好みって、そうそう変わらないじゃないですか。私の夏川さんみたいに可愛くないし、優しくもないし」

小さな溜め息が聞こえて、腕を組む様子が見える。

「お前な。夏川と自分と、どうして比べるのか考えた事があるか?」

どうして比べるのか?

そんな事を言われても困る。

だって、イライラするんだもん。だから考えたくないけれど……。

「きっと……課長が好きだから?」

「……疑問系で言われても、俺は動かねぇよ?」

「私だって解んないんですよ! だって仕事してる時の課長は怖くて苦手だし。でも優しいし。それに私のタイプは真面目できちっとした人だけど、何だか課長はどこか違うし」

「不真面目って訳じゃないけど、だらしねえのは認める」

確かに真面目なんだけれどね? そう言うことじゃなくて……。

確実なのはきっと。

「好きなんだもん!」

でも私は可愛くないから。
男の人はみんな可愛くない女子は選ばない。
付き合ったって、結局は可愛い女の子選んで離れていくじゃない。

捨てるくらいなら、最初から付き合わなければいいのに。
最初から好きだなんて言わなければ、そんな思いもしなくていいのに。

好きな人に、そうやって別れを告げられ続けてきて、素直に好きだなんて言えるはずがないじゃない。

「鳴海……」

低い声にどこか冷たさを感じて肩を震わせた。

けど……。

「好きなら、言い訳考えてねぇで飛び込んでこい。俺は受け止めてやる」

とても偉そうに言うから……ちょっと笑ってしまう。

「飛び込んでも、燃え尽きるなよ?」

目の前に課長がいる。

怖くて、優しい、相反する人が……。
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