優しい彼が残したもの
出会い
康喜と出会ったのは、今から3年前の春。
大学が決まり上京した私は、引っ越しを済ませると、すぐにバイトを始めた。
マンションの近くにある、そこまで大きくはないけど、落ち着いた雰囲気のカフェで働いた。
バイトにも慣れ、入学式間近になり、緊張感も増してきた頃だった。
「ありがとうございました。」
レジでお会計をしていると、テーブル席に忘れ物を見つけた。
さっきお会計した男の人だ。
届けに行きたいものの、お会計待ちのお客さんもいてレジを離れることはできなかった。
他のスタッフも忙しそうに動き回っていた。